現在ロシアの侵攻を受け、戦場と化しているウクライナ。
実はこの国は、数々の洋楽アーティストのMVの撮影地となっていたことをご存じですか。
(Florence + The Machine / King)
ウクライナはアーティスト達に撮影地を安価で提供していて、地下鉄や空港などの交通機関での撮影も快く許可していました。
それだけでなく、都市や自然、カラフルでユニークな建築物、ソビエト時代の廃墟等、ウクライナは一つの国の中に様々な姿を持ち、撮影スポットに事欠かなかったのです。
そんなウクライナで撮影されたMVから、15作を紹介します。
1. Mark Ronson ft. Miley Cyrus / Nothing Breaks Like a Heart
ウクライナを縦断するドニエプル川に掛かるダルニツキー橋を舞台にした、マイリーと警察の追走劇です。
1kmの長さを誇る首都の主要な橋ですが、撮影の為に2日間閉鎖されました。
設定上はアメリカの為、道路のサイン等は英語に差し替えられていますが、もしアメリカで同じ規模の土地を使用したなら、何倍ものコストがかかったはずです。
2. Coldplay / Trouble in Town
ジョージ・オーウェルの小説、動物農場からヒントを得て、キーウの街をディストピアに仕立て上げた作品。
共産主義化を皮肉った曲の舞台にソ連の土地だった場所を選んだのは、秀逸なアイディアだと言えるでしょう。
3. Tame Impala / Let It Happen
ウクライナ最大の空港、ボルィースピリ国際空港で撮影された作品です。
現在空港は、戦争の被害を受け閉鎖されています。
2010年にリリースされたSolitude is BlissのMVも、キーウ市内で撮影されました。
4. Avicii ft. Rita Ora / Lonely Together
キーウ市内にあるリバルスキー橋、フリシュコ国立植物園、ペレモガ公園等が使用されました。
Aviciiの生前最後にリリースされたシングル曲であり、このMVはMTVのVMA(ビデオ・ミュージック・アワーズ)において、ベストダンスビデオ賞を受賞しています。
5. Years & Years / Shine
不安定な恋愛感情を、超自然的な現象が起こる家で表現した作品。
Pushcha Vodytsya地区の森の中に眠る、ソ連時代の屋敷で撮影されました。
この地区もロシアからの攻撃を受けています。
6. Foals / 2am
ロシアのウクライナ侵攻のほんの1ヶ月前に、キーウで撮影された作品です。
ウクライナ人のタヌ・ムイノ監督の元に、全てウクライナ人のエキストラと共に製作されました。
7. R3HAB & ZAYN & Jungleboi / Flames
ソ連時代のブルータリズム様式のこの建造物は、どこかSF映画のような近未来感を漂わせています。
この図書館は、K-POPグループNCTのBOSSのMVに使われたことでも有名です。
8. Twenty One Pilots / Nico and the Niners
退廃した街に反逆者達が集うストーリー。
キーウ大学の人工頭脳学部のキャンパスが撮影地にされています。
また、初めに出てくるユニークな円形に並ぶ建造物は、実際のハルキウの街を上空から捉えた映像を元に作成されています。
ハルキウではロシアとの攻防戦が繰り広げられ、ウクライナが奪還しました。
9. Bring Me The Horizon / MANTRA
カルト宗教と、人がいかに洗脳されやすいかを皮肉った曲。
キーウの国際芸術文化センターにあるOctober Palaceという宮殿が、オリバー率いるカルト教団の集会場に化けました。
10. Nothing But Thieves / Amsterdam
2ndアルバムBroken Machineの世界観を表現できる舞台として、ソ連時代に使用されていた工場の跡地が選ばれました。
この次にリリースされたSorryのMVでも、地球最後の日を表現した映像の中で、Vo.コナーがキーウの住宅街を歩いています。
11. Bombay Bicycle Club / Eat, Sleep, Wake (Nothing But You)
2019年に活動再開を宣言した彼らが一番初めにリリースしたこの曲のMVも、ウクライナで撮影されました。
前述の工場がここでも登場しています。一つの舞台で、両バンドを代表する対照的な2曲のサウンドが表現されているのは、とても興味深いです。
12. Charli XCX / White Mercedes
キーウ郊外のトロイエシュティナ地区で撮影されました。
広い土地に堅固な高層住宅が立ち並ぶこの地区も人気が高く、MØのKamikaze、FoalsのWhat Went Down、Nothing But ThievesのSorry等、沢山の作品の撮影地になっています。
13. Florence + The Machine / Heaven Is Here
フローレンスは、今年2022年に発売された5thアルバムDance FeverからKing、Heaven Is Here、My Love、Freeの全4曲のMVを、ウクライナの映像チームと共に製作しました。
このMVに参加しているダンサーの中の2人は、現在避難生活を強いられているそうです。
14. Florence + The Machine / Free
「勇敢なウクライナの友人達の、忍耐力や創造性と精神に捧げる」として、最後に公開されたのがこの曲FreeのMV。
この曲はフローレンス自身のメンタルヘルスについて書かれたものですが、「私は自由だ!」と、何度も繰り返し叫ぶこの歌詞は、ウクライナの人々の強さと自由を鼓舞しているようにも聞こえます。
最後は世界で最も聴かれているアーティストの一人、この人から。
15. Ed Sheeran ft. Lil Baby / 2step
エドとリル・ベイビー、ダンサー達が、夜のキーウの街を舞台に踊っています。
彼はこの動画による印税を、ウクライナの人道支援に寄付する予定だと言っています。
ここまで読んで下さった方にとって、ウクライナという国が少しでも身近な存在になったら嬉しいです。
この他にも沢山の著名なアーティスト達のMVが、この国で撮影されてきました。
数々の芸術作品を生み出してきた舞台を破壊しているという意味でも、この侵略戦争を改めて強く非難したいです。
(参考:Kyiv is becoming the world’s music video capital: 12 iconic clips
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A Visual Guide to the Russian Invasion of Ukraine
Florence + the Machine. Filmed in Kyiv and dedicated to Ukrainians | odessa-journal.com
Kristiāna Stepanoviča on LinkedIn: Florence + The Machine - My Love
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