I'm just holding on for tonight.

どこにも行けない呟き

【ライブレポ】SUPER SONIC 2021

ライブレポ。

そう、ライブレポです。

再びライブレポが書ける幸せを噛み締めながら書いていこうと思う。

 

突然の感染症の出現により、あらゆるライブ、フェスがキャンセルになった2020年。一年中、葬式みたいな気分だった。

今年もそのままの状態が続くのかと陰鬱な気持ちでいたところに、昨年延期となっていたスパソニの再告知が来た。そしてそこには昨年の告知の時と同じ、AURORAの文字が。

嬉しいよりも、「やれんの???」という困惑が先だった。

本当にやんの?海外アーティスト日本に来るの?こんな状態の日本に?

その困惑は、残念ながらその先何か月も、そして開催数日前まで続くことになる。

オリンピックは非難轟々。夏にかけて感染者数は鰻登り。もう諦め半分だった。

 

その後、大阪のスパソニがキャンセル。

え、てか逆に東京はやるの?

大物アーティスト2組がキャンセル。

本当にやるの?

台風直撃のニュース。

やれんの!?!?!?

 

とうとう半信半疑のまま前日になってしまった。

どうやら本当にやるらしい。

そしてなんとAURORAのライブが、コロナが始まってから初めての海外アーティストによるライブになるらしい。

奇跡的な瞬間を目の当たりにできる事実に戦慄が走る。興奮が止まらない。

 

タイムテーブル

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折角ひっさびさの海外アーティストのライブだし、絶対に近くで見たい!

でも開場と同時に入ったとしても、トイレが近い私は初めから待ち続けるなんてとても出来ないと思う。

なので、ファン層が分かれそうなSKY‐HIの後に前方に攻めるという戦略をたてた。

 

なんか特別なことしたいけど、前回のAURORAのライブの時みたいにフェイスペイントは出来ないし(てか最近本人もしてない)、マスクにロゴを書いた。

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このタイプのマスク、不織布だし、呼吸しやすいし、平だから何か書けるし、もはやライブ専用マスクでは???

それから数日前に思い立ってレインボーフラッグを購入した。

 

当日朝

台風の影響で電車が遅延していた。

片道2時間、永遠にストレスでいっぱいだった。特に東京駅での乗り換え。京浜東北線から京葉線まで、1km以上あるんでは??動く歩道が何本も繋がっていて永遠に長かった。

もう辿り着く前からしんどい。帰りたい。

前回2017年にサマソニに行った時は、幕張の友達の家でお泊まりして、翌朝会場まで皆で自転車で行った。それを思い出してすごく切なくなった。

駅からは小雨の中、レインポンチョを着て長靴で走る。

あの豪雨の2019年のフジロックで、マーチンブーツの中を秒でプールにし、安物のレインコートをヘッドライナーの前にビリビリにした経験から、今回は重装備だった。

 

ようやく会場に到着

駅から遠い…

少し前にTwitterで、他の人が開場前のディスタンスのとれた整列の写真をあげていたのを見たけれど、もう既に全然人が並んでない。焦る。焦りすぎて何の写真も撮ってない

スタジアムまで走る。時間的にまだSKY‐HIのアクトの最中だと思う。間に合うか。

 

スタジアムに入ってみて。

あれ、スッカスカじゃない?

と思いきや、よく見ると人が一定間隔で立っている。

スッカスカに見えるのもそのはず。だって密にならないようにしてあるのだから。

 

いや、よく考えたなあと思ったよ。

ソーシャルディスタンスを保つ為に、前向きと後ろ向きの折りたたみ式の椅子が、交互に組まれて設置されていた。

後ろ向きの椅子には当然座れない。

そして近づいていくと、前向きの椅子にはもう、既にどの席にも人が前に立っていた。

ここも、そこも、どこもかしこも。

空席を探していたら、後方ブロックまで来てしまった。

 

うわーステージ遠っ。

なんとかSKY‐HIの演奏中に入れたので、あとは終了後にどれだけ人が捌けてくれるかにかかっていた。

ちなみにSKY‐HIの人、MCで「今日ここに来たことを後ろめたくなんて思わないで下さい。あなた達はエンターテインメントの未来を背負ってるんです」って言ってて、思わずじーんときた。

 

演奏終了後、そそくさと前方ブロックへ向かう。空いている席から席へと飛び移って、じわじわと前方へ。

我ながらめちゃくちゃシュールだと思った。

 

悟った。

スパソニとは。

スタジアムを舞台に繰り広げられる、見たいアーティストをかけた壮大な椅子取りゲームである。

 

一席ずつ前へ前へと進んでいく。

意外といける?まだ前いける?お、あそこも空いてる!

みたいな感じで、遂に前から4列目まで来れた。

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周囲の人たち、バリバリにEDM目当てですみたいなお洒落な格好してて、はい、ここでギブアップ。最前列の人はZEDDのTシャツを着ていた。今からずっと待ち続けるのか、凄。

ソーシャルディスタンスのおかげで、4列目でもステージから余裕で旗が見えそうなので、まあここでいいでしょう。

 

1人で来ることの利点。席が一席でも空いたらすぐに前へ詰められる。何人もの人と連れ立っていたら、空席が見つかっても人数分足りなかったら、どうしよう、となっているうちに埋まってしまう。

1人で来ることの欠点。誰も席を守ってくれない。立ち去ったらアウト。

一応荷物を置いての退席は禁止になっていたけど、色んな人がやってたよね。グループのうち1人だけが席を立って、連れの人がしれっと荷物置いてたり。結構見た。そこ荷物どかしてくださいなんて言えるわけないし。

でもアリーナは、後ろまで人が入ると入場規制がかかってた。席立った人、ちゃんと戻って来れたんだろうか。

 

次のアクトはどんぐりず

席も確保したところで、ようやく楽しむ余裕が出来てきた。途中からサァーッと雨が降ってきた。

100%そうだろうとは思ってたけど、どんぐりずを見て席を立った人は、1人もいなかった。

 

全アクト、演奏終了後は着席で待機の指示。

何をどうやっても密になれないようになっていた。

そんなわけで席に座り、雨に打たれながら静かにAURORAのサウンドチェックを聴く。

 

そして遂に、コロナ禍の日本のステージに、最初の海外アーティストが降り立った。

彼女の登場は雨上がりと共に。

彼女自身も小さなレインボーフラッグを手に持って現れた。

 

AURORA

"Hello Hello"

今回の彼女のライブはA Different Kind Of Humanから始まった。

(動画が消えてしまいました…)

ライブの1曲目にぴったりな曲じゃん。そう思った。

AURORAが、彼女の世界に導いてくれる曲。

 

"Are you awake or are you sleeping?
Are you afraid?
We've been waiting for this meeting"

「こんにちは。私達はこの出会いをずっと待っていたよ」

私も待っていたよ!!!

 

「船があなたを連れていくよ。おいで、我が家へ連れて行ってあげる」

さあ、彼女の世界の中でライブが始まる。

なんだか前回よりも少し大人びて見えた。優美な感じの衣装のせいかな?Florence Welch的な気高さを段々と身に着けてきているように感じた。

 

The River

彼女の歌声が水分を含んだ空気の隅々にまで染み渡って、まるで川の中にいるような不思議な感覚だった。

 

2年前にライブを見た時に、今度はフェスで、遠くから見たいと思った。

海外のフェスの動画で見た時のようにダンサーは連れてきてなかったのが残念だけど、大きな舞台の上で伸び伸びと、彼女が全身で彼女の曲の歌詞を表現しているのを観ることが出来て、とても嬉しかった。

 

新曲のCure For Me

3回目の演奏だと言っていた。という事は、このライブがコロナ後3回目のライブってこと…?

演奏前に力強いメッセージをくれた。

「私達が私達でいられることは、とても大切なことだと思う」

「この世界で生きていると、自分には欠点があるとか、変だとか、他の人と違うということばかり気にしてしまいがちで、居場所や希望を見つけるのはすごく難しい。そんな風に思うあなた達のための曲」

「私はどんなあなたでも愛しているし、あなたはただ、あなた自身でいることを許されるべき」

 

"I don’t need a cure for me"

「私に治療なんか必要ない」

こうやって社会への痛切なメッセージを込めた曲を作ってくれるアーティストが大好きだ。

 

Apple Tree

私の周りにAURORAのファンはあまりいなくて、皆棒立ちだった。

あれ?踊るのって許されてるよね?腕あげたりするのはOK?大丈夫だよね?最初すっごい恐る恐る踊ってた。

 

気が付いたらAURORAは靴を脱いでいた。そして靴下も脱いで素足になった。

MCになると、周囲からかわいい…かわいい…とさざ波のような呟き声が聞こえた。

ホテルでアニメを見ていたらしい。だって引きこもって一人でいるの好きだからウフフって言ってたのが、いかにもintrovartなAURORAらしかった。

ヴァイオレットエヴァーガーデンを見てたと言っていた。後で見よ。微かに知ってたけど、主人公なんかAURORAみたいじゃなかったっけ?

 

Exist For Love

そういえば、この曲も初めて聴くな。というか、もはやこの曲のリリースが遠い昔のように思える…。

最後の"I love you"の繰り返しは、オーディエンスに向けて囁いているように聞こえた。

 

Exist For LoveMurder SongRunawayとメロウな曲が続く。彼女が作り出した、3曲とも全てバラバラの世界観に、次々と惹き込まれる。

オーディエンスが声を出さないこともあってか、今回は全体的に魅せるライブだったように思う。私も観るに徹していて。

 

この曲は母なる大地へ捧げると、The Seed。歌詞のないメロディーで、彼女の歌声が無限に響き渡って、酔いしれた。うまく説明できないけれど、カタカナで書くと絶対に良さが伝わらないから書かない。

 

Queendomの前には絶対にMCがあると思っていた。

"It's okay to be gay!"

と彼女が始める。

この曲を待ってたんだよ!

ここぞとばかりにレインボーフラッグを高く掲げると、AURORAは私を指さして、"I love that you have the flag. It's amazing!"と言ってくれた。

 

"The sea waves are my evening gown
And the sun on my head is my crown
I made this queendom on my own
And all the mountains are my throne"

「波打つ海は 私の衣に
頭上の太陽は 私の冠に
私がこの女王国を築き上げた
そして全ての山々が 私の玉座

ここの歌詞が大好きで。

そりゃそうだ、ドール作ったくらいだもの。

AURORAは"The sea waves are my evening gown"で、海の波みたいなドレープがたっぷりのドレスの裾をつまんで、"And the sun on my head is my crown"では、片手で冠を被る仕草をした。めちゃくちゃ好きだー!


Running With The Wolvesでは、彼女はオオカミだった。雄叫びをあげて、スタジアムに木霊する自身の声を凄く面白がっていた。


そして前回の来日と同様に、Daydreamerで終了。

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ここで見た夢は本物だった。いつまでも脳裏から消えないでくれと思った。

 

《セットリスト》

A Different Kind Of Human
The River
Cure For Me
Apple Tree
Exist For Love
Murder Song
Runaway
The Seed
Queendom
Running With The Wolves
Daydreamer

 

正直こんなに演奏してくれると思わなかった。昼間の時間だし、10曲もやらないと思ってた。圧倒された。

 

レインボーフラッグに気づいてくれて嬉しかった。

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この旗を持ってるってことは、あなたもそういう属性なの?と人に聞かれた。

私は自分のセクシュアリティを公表してないけれど、この旗を振るのには、自分のセクシュアリティは関係がないと思ってる。

この旗は「人が人を愛することの自由」を謳歌する旗だと思ってるから。

それに何年か前、ニューヨークで行われたウィメンズマーチに好きなバンドのメンバーが彼氏と参加していて、驚いたのを思い出す。そうか、女性の権利を訴えるのは、何も女性だけじゃなくていいんだ、と。

何かの権利を主張するのに、その当事者である必要はない

この旗を振る資格は、その旗に込められた思想を共有する全ての人にあると私は思う。

 

Clean Bandit

私、Clean Banditも大好きなので。見れてすごく嬉しかった。

DJセットって、無知な私はどんなライブになるのか予想ができてなかったけど、来日してたのはメンバー1人だけだったので、ああそういうことかと。

DJだと人数少なくて済むし、感染のリスクも少ないわけだし、コロナ禍のライブはDJの方がセッティングしやすそうだな… 

でもゲストボーカルを1人連れていて、歌も盛り上げ方もめちゃくちゃ上手い人だった。ファンは誰だか分かってたんだろうか。

個人的にRather Beの"N-n-no, no, no, no place I'd rather be"でMVの踊りが出来たので自己満足した。

 

ああ、もう魂が抜けた。

Clean Bandit終了後、アリーナ席から撤退した。

ご飯を食べた後戻ってきて、スタジアム席から少しだけ石野卓球を眺めた。

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スタジアム席もこんな風に、一つ飛ばしでしか座れないようになっている。

 

ZEDDも数曲は知ってたけど、満足としんどさの方が勝っていたので帰った。

しんどさというのは、常に会場にピリピリした空気が流れていたこと。感受性がガバガバなので、正直に書くと辛かった。

見回りのスタッフの人数がものすごかった。めちゃくちゃ人件費かかってるだろうなーと思った。運営側の、感染対策を徹底的にやってやるから見てみろという、執念を感じた。凄かった。それは賞賛に値すると思う。頭が上がらない。

だけど、来年もこんな感じのフェスであって欲しくない。

 

海外の"COVID is over"的な、コロナ前と同じようなライブの風景が、日本のライブへの批判と同時にTLに流れてくるから、更に心が削れる。

Twitterで配信を見ていた人の「声出してる奴いるじゃん、黙れよ」という呟きが心に刺さった。

出る杭を出さないように、互いを牽制し合う日本の雰囲気がしんどい。重箱の隅を突くような非難がしんどい。この空気、いつまで続くんだろ。

だから、来年はこんな感じのフェスであって欲しくない。

 

長靴まで履いてきたのに、結局雨は殆ど降らなかった。

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水溜りに映る空とスタジアム。

 

会場の外に一歩出ると、ボイスレコーダーを持ったテレビ局の取材に捕まって、立て続けに質問攻撃を受けた。

「会場内はどんなでしたか?
密になってましたか?
わーってなってました?
お酒飲んでる人は?
じゃあ持ち込んでる人は?
なにか心配事は?」

全部YESが欲しい質問なんだろうなと思った。

他にも取材を受けた人のtweetを結構見たし、きっと下手な鉄砲数打ちゃ当たる方式で、求めてる回答が引き出せるまで片っ端から聞きまくってたのでは?

なんかうんざりした。

逐一全部否定して、スタンド席の写真を見せて「この席一つ一つにテープ貼ってるんですよ?物凄く対策されてました!素晴らしかったです!」と言って逃げた。

 

東京駅まで戻ると一気に現実に引き戻されて、フェス帰りの自分だけ浮いているような気がした。

ふわふわした気持ちのまま帰宅した。こうして私のスパソニは、一瞬にして終わった。

 

とにもかくにも、2年ぶりに海外アーティストを見れて良かった。

日本におけるエンターテインメントの、復興へと向けた大きな一歩を踏み出す瞬間の中にいられたことが、すごく光栄だった。

これが希望の火になってくれると、これから先に大きく燃え上がってくれると、心から願うばかり。頼むよー。。。

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ありがとうSUPERSONIC

遂に海外からアーティストを招致して、フェスを完遂してくれたクリエイティブマンに、大きな拍手を。