I'm just holding on for tonight.

どこにも行けない呟き

【ライブレポ】PUNKSPRING

12年越しに、憧れのブラックパレードに参列してきた話。

 

パンクスプリングMy Chemical Romanceを見てきた。

コロナになって行けなかったArctic Monkeysのチケット代が返ってきたので、直前になって行くことに決めた。

でも今となっては行かない選択肢があったことが信じられない。

 

マイケミは私の原点だった。

初めて買った洋楽のCDだった。

 

皆どんなふうにして洋楽と出会うんだろ。

両親がビートルズを聴いてて… とか、ロック系のお店で必ず見るようなロゴのバンド名を挙げる人を見るたびに、気後れしてしまう。

だってそんな正当なきっかけじゃないし、目にするロゴも未だに知らないバンドだらけだから。

 

新しい物と出会うのはいつも誰かに勧められた時だったから、必ず誰かの感想がセットになってついてきた。

当時の私は「感想が存在しない音楽」と出会いたくて、一番初めに自分の感想を手に入れたくて、日本語の曲じゃなければ感想が無い!(というかあっても読めない)と安直に思った。まあ要するに拗らしていた。

YouTubeで洋楽をあさっていて彼らを見つけた。

多分サムネに惹かれたとか、そんな理由。

そして一瞬にして彼らの音楽に惹き込まれた。自分たった1人で見つけた世界に。

今はSNSが充実してるから、人の感想にぶつからずに辿り着くのは更に難しいだろうなあ。

 

そんな100%自発的な、タイミングも何もない出会い方をしたので、私が好きになった頃にはもうジェラルドはBlack Paradeの衣装を脱ぎ捨てていたし、賛否両論を巻き起こした4thアルバムDanger Daysすら、リリースされて時間が経っていた。

結局一度もライブを見ることなく解散してしまった。

 

とはいえ、ここ5年位は全然聴いてなかった。

以前「好きなアーティストは聴きすぎて自分の中に入ってしまうから、そのうち聴かなくても良くなってしまう」みたいなことを誰かが言ってて、目から鱗が落ちた。多分それだ。(アーティストにとっては迷惑な話だけど) 

 

先日5年ぶりにブラパレとヘレナを聴いたら、歌詞をほとんど全部覚えている自分がいて引いた。

それがパンスプのチケットを購入する最後の一押しになった。

 

前置きが長すぎ。

 

前日

8年前アメリカに留学してた時にHot Topicで買った、ブラックのマニキュアを塗った。

Hot Topicという時点でもうエモい。

もう中身はカピカピに乾いてると思いきや、少しダマになってたけどなんとか塗れた。

 

マスクが不要になってからすぐのフェス参加だったけど、コロナに感染しない自信が、それはもう、ものすごくあった。

そりゃそうだ、先週になったばかりだもの。

かくしてアクモンは尊い犠牲者となった…

 

会場

当然のようにマイケミのバンドTシャツを着てる人が沢山いて、すでに感極まる。

 

ほんとにマイケミさえ見れればよかったので、2時頃に着いて、ご飯を食べて、いつも会う人達とわいわいして、ゆるーくSimple Planからスタート。

 

Simple Plan

The 懐かしい音楽。

2016年に単独公演を見た時はピエールが一人で歌ってたJet Lagを、ゲストボーカルを呼んで歌ってくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。ラブソングでも歌詞がユニークで好きな曲。

Simple Planもハマった時期が人とズレていたから、定番の曲達より4thのSummer Paradiseとかの方が刺さった。

本当に日本のオーディエンスを沸かすのが上手い、お茶目なバンドだよなあと改めて思う。

フェスという環境では尚更ありがたい存在なんじゃないかな。

 

Bad Religion

ごめんなさい。

目当てでないバンドも楽しむように心がけてたけど、突然意識が遠のきそうになったので、音楽にのる余裕が全然なかった…

人が密集した場所に長時間いるというだけのストレス。自分の精神がどんどん脆弱になって、ライブという究極に感情が揺さぶられる環境にそぐわなくなっていくのが悲しい。

今ここで気を失ったらマイケミが見れない…

そう思ったら冷汗が出てきて、平常心を保つので精一杯だった。

私の周囲もマイケミが本命なのが明らかで、ほとんど微動だにしてなかったから、お決まりの空気を勝手に感じてヒヤヒヤもしてた。

でも終わった後に「俺もうBad Religionで燃え尽きたからいいわ…」と言いながら、彼らのTシャツを着た人達が何人か前から戻ってきて、逆に安堵した。

 

終わってしばらくして、モニターに馴染み深い名前が表示された。

My Chemical Romance

なんだこの安心感

憧れの人達についに会えるという緊張や興奮ではなく、とにかく安心感と、信頼感

旧友に会った時のような。いや全然違う、私はどんなに親しかった人でもどうせ会うのに緊張するし。

なんだろ、棚の中から子供の頃に愛したぬいぐるみが出てきたみたいな。

 

Fall Out Boyをレディングフェスで見た時も感じたそれ。

こんな圧倒的な安心感を前にしたら、私の中のアーティストは、誰もが思わず道を開けてしまう。

 

このステージは“Decay”のイメージなのかな?

 

スクリーンを目にして絶叫するオーディエンスを前に、3人のバンドメンバー、そしてついに私達のGerard Wayが登場した。

 

復活後にリリースされたエモーショナルな一曲、The Foundations of Decayからライブはスタート。

 

他の公演の写真を見て知っていたけど、ジェラルドは今日もスーツのタイトなスカートを穿いていた。パンプスも履いていて、途中で蹴り捨てて素足になったらしい。

でもなんか、マイノリティだとかジェンダーレスだとかクィアだとか、そういったワードは一切頭に浮かんでこなかった。

ただジェラルドがジェラルドしていただけだった

彼を前にしたら語彙が消滅して知能が退化した。いやコンセプトがあるならそりゃ知りたいけど。

スーツのスカート買わなかったけどやっぱり買おうかな。

新しいことに挑戦したくて模索してるとかMCで言っていた気がする…? 聞き取れてたか自信がない。

 

2曲目に最高のアンセムI'm Not Okayがきて、早くも会場の歓喜は頂点まで達した。

10代の頃にファンガールして写真をかき集めていたその人が、形そのままに私の前にいる感動…

 

高校時代は生粋の陰キャ

ギターが下手くそでバンドを追い出され、実家の地下室でアニメを描いて暮らしていた主人公が、最強のギタリストを従えて再びバンドを組み、今度は大成功。

そして彼は自分が考えた物語を音楽で披露して、人々を圧倒させる。

世界中の陰キャもといアウトサイダー達にとってもそうだったように、彼はティーンエイジャーの私のヒーローだった。

それからその後に漫画も自分でリリースして、ドラマ化までしちゃうんだからもう、他人の作った架空の感動ストーリーなんか何もいらないわ。

 

顔がスクリーンにアップになるたびにこんな感じで、最初どんだけ白目剝いてんだこの人とか思ってたら、白いカラコンをしてたみたいだった。

ジェラルドの声は別に初めて聞いたわけじゃないはずだったけど、思ったより高くてびっくりした。歌声とはまた違って、それでもずっと聞いていたい心地よい声。

オーディエンスの事を気遣ったり、他の出演バンドへのリスペクトを口にしていて、彼の人柄が滲み出ていた。

 

確か、復活したよとか、また日本に戻って来れて嬉しいみたいな言葉は無かった。

でもそんなものは別にいらなかったと思う。

 

だってマイケミはずっとここにあったから。

解散を発表した時にジェラルドは言ってたよね。「マイケミは死なないよ、だってこれはバンドじゃなくてアイディアだから」

私はその言葉が大好きだった。

きっと彼の部屋の中に「マイケミ」とタイトルの書かれたノートはずっとあって、それをまた開いただけなんでしょう?

新しいページにちょっと何か書き加えようかなって、そう思っただけなんでしょう?

きっと。

 

Danger Daysの音楽性や、ジェラルドのソロプロジェクトで自分の中の印象が変化してただけだと思うけど、これだけ時が経っても、1stや2ndあたりの激しさを完全に保持していて凄いな。セトリにあるんだし当たり前だけど。

ジェラルドの見た目も解散前から全然変わってなくて、もしかしてマイケミの活動と共に年齢も止めてたんじゃないか……

フランクのスクリームも最高にかっこよくて、曲の勢いを更に更に加速させてた。

 

レイトロはずっと幸せそうにニコニコしながらギターを弾いてた。

あんなに優しい笑顔で激しくギターかき鳴らす人初めて見た… 菩薩かな?

レイトロが幸せで私も幸せだよもう。

 

マイキーも終始ニコニコしてて嬉しかった。

 

世界中で一番好きだったピアノ音が鳴った。

その一音目で誰もが察して、群衆がわあっと沸き立ったのがもう最高だった。

Welcome to the Black Parade

(鍵かけてる時は見れない)

 

歌詞の初めから大合唱。

人生でブラパレを、こんなに大勢と歌う日が来るなんて思わなかった。お風呂で一人で熱唱したことしかなかったのに。

今までに行った日本の洋楽ライブで、一番最高なシンガロングだった。

 

This is How I Disappearはライブでやる曲だと思ってなかったから嬉しかった。

私はほんとに学校の英語ができなかったから、ブラパレの歌詞カードが英語の教科書だった。

This is howの文法もこれで覚えたくらいだから、この曲もほとんど全部歌えた。

 

マイケミから離れていたとはいえ、彼らのヘヴィーなサウンドやダークで詩的な歌詞は、今一番よく聴いてるNothing But Thievesに辿り着くまでの動線上にいるだろうし、というかそうか、そもそも始まりが彼らだったか。

 

Helena

言うまでもなく演奏されると分かってた曲。

MVを何千回も再生して、画面の中のジェラルドと歌っていた高校生の自分へ。

この曲を、本物のジェラルドと、一緒に歌ったよ、、、、、、

 

Mamaの始まりには全身がゾクゾクした。

ヘレナの夢から一瞬で醒めた。この曲の本物の音が今眼前で鳴り響いていて、それがそのまま自分にブッ刺さってくる事実を、ここでまた再認識して震えた。

 

The Kids From Yesterdayの、なんだか切ないメロディーで、ライブは締めくくられた。

 

《セットリスト》

The Foundations of Decay
I'm Not Okay (I Promise)
Boy Division
Give 'Em Hell, Kid
The Ghost of You
Kill All Your Friends
Our Lady of Sorrows
Planetary (GO!)
Welcome to the Black Parade
It's Not a Fashion Statement, It's a Fucking Deathwish
Bury Me in Black
Teenagers
DESTROYA
This Is How I Disappear
The World Is Ugly
Helena
Mama
Famous Last Words
Vampires Will Never Hurt You
The Kids From Yesterday


久しぶりにものすごい充足感。

 

10代の頃に愛していたマイケミの、物語の一部になれた。

ジェラルドが作った世界の中に入れた。

 

12年前に私のヒーローだった人は、12年後もヒーローでい続けてくれてた。

今日ここに来て、それが分かって本当によかった。

 

パンスプはサマソニより少しだけ早く終わったけれど、やっぱり駅まで人が殺到していてなかなか列が進まなかった。

結局終電の、なおかつ遅延で最後の乗り換えは全力疾走するという、めちゃくちゃスリリングな帰路についた。

シャワーを浴びて呆然と写真を眺めている間にもう朝が来た。

耳鳴りが彼らの名残を物語っていて、もはや愛おしくて消えないでくれと思った。


終わり。

 

今、聴いていなかった時間を取り戻すかのように毎日聴いてる。