I'm just holding on for tonight.

どこにも行けない呟き

【ライブレポ】2019年まとめ

今年は去年のように年始から大好きなバンドを観れはしなかったし、沢山のアーティストを観れたりもしなかった。大阪へ遠征したり、日本から出て海外フェスに足を運んだりもしなかった。

でも人生で一番の記憶を争えるような、凄まじい輝きを目に焼き付けてしまった。

 

Fuji rock (7/28)

今年初めのライブがなんと夏フェス。7月だよ。1年の半分終わってるよ。容易に察せられることだけど上半期は完全に死んでましたね。何をして生きていたか覚えていない

でもフジロックのヘッドライナーに短いアルファベットの3文字を観た瞬間、悲鳴を上げて、泣いて、これは観に行かなくてはいけないと思った。

本当にSIAさえ見れれば良かったので、だらだらと支度をして、安上がりな青春18切符の鈍行に揺られて苗場へ。

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到着時から既に雨が降っていて、バスの降車と共にレインコートを着用。なんとなくテンションが下がる。

 

まずCourtney Barnettを観た

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かっこいいな。シンプルな白いタンクトップと虹色の靴下と、それから一瞬書くのを迷うけれど、迷う理由も嫌いなので書くと、時折見える脇毛も、全てが挑発的でかっこよかった。

 

そのあとはAlvvays

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レッドマーキーは雨からの避難民だらけで、グリーンステージのアジカンを横目に呑気にやって来た私が入れるはずもなかった。

しばし雨に打たれながら彼女達のシルエットを遠目に眺め、途中からじわじわと屋根の中に入ることができた。中には椅子に座って寝ている塊が沢山いた。割と早急に解決させてほしい案件だと実体感できた。

彼女達の奏でるふわふわした軽快なサウンドに少し救われた気がした。

 

気がついたらレインコートが見事に裂けていた。なんだかもうよく分からない形のレインコートだった、一応水を弾くらしい代物をとりあえず被ったまま、覚悟を決めてグリーンステージへ。

 

SIA前のアクト、Martin Garrix

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私はEDMにはあまり興味のない人間だったけれど、熱狂的なファンのシンガロングや踊る様を見て、印象が一転してよかった。フェスだからこそ、ジャンル違いの音楽の魅力を五感でもってして知れる。いいね。

彼とオーディエンスとを繋ぐ一体感は、ひたすらに楽しさと明るさしか生産していなかった。最高だ。

 

彼のステージが終わってからは、ひたすらに滝行の時間だった。

雨が、雨が止まらない。

完全に心を無にしなければ耐えられないほどの豪雨だった。真っ暗な天井から容赦なく叩きつけてきた。

マーチンブーツの中はとっくの昔にプールになっていたし、服はどこを絞っても水が滴り落ちた。スマホを濡れないようにするには手で覆うしかなかった。瞬きをして眼球から雨水を弾いた。

寒かったけど、一度寒いと認識したら耐えられなくなる気がしたから、ひたすらに無を貫いた。

救いのない雨、雨、雨、

次の瞬間に真っ暗なステージがパッと明るくなって、あの大きなリボンを身につけたSIAが姿を表した。 

 

SIA

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彼女のショーはAliveから始まった。

あれほど空から雨水を、圧力を受けていたにも関わらず、ステージからの圧倒的な熱量は、それを遥かに凌駕していた。

これ程に力強い曲はどこにも存在しないと私は思う。生きていることへの叫びだ。

「私はまだ息をしている」
「生きている」

コンテンポラリーダンサーMaddie Zieglerの雄叫びをあげるようなポーズと共に、SIAの雷鳴のような歌声を浴びた。

 

その後のBird Set Freeもそれに引けを取らない破壊力を持っていた。

「音が外れてたって構わない
メロディーの中に私を見つけるから
愛の為に 私の為に歌うんだ
私は叫ぶ 解き放たれた鳥のように」

 

Reaperは机と椅子に腰掛けた男女がじゃれ合いながら、振り子のように揺れて踊っていて、不思議な世界観に酔いしれた。

Big Girls Cryの哀しいピアノの音は、しとしとと降り続く雨音と綺麗に重なった。

彼女に夢中になった理由の一つはまさにMVのコンテンポラリーダンサー達だったけれど、Maddieを始めとするダンサー達が、MVの再現とばかりにステージ上で踊っている様を生で観るのは最高に贅沢だった。

 

Cheap Thrillsのダンスがすごく楽しかった。

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バラード調に歌われたTitaniumの人形劇は、狂気と切なさが混在していた。

アンコールのThe Greatestはカラフルな照明と共に、私達全ての存在を祝福しているように感じた。

SIAが目の前にいて、生きていた。それだけで充分すぎた。

 

《セットリスト》

Alive

Diamonds

Reaper

Big Girls Cry

Bird Set Free

One Million Bullets

Cheap Thrills

Fire Meet Gasoline

Elastic Heart

Unstoppable

Breathe Me

Move Your Body

Titanium

Chandelier

The Greatest

 

少し前にTwitterで「〇〇(自殺未遂をしたアーティスト)が生きることを選んだ世界だから私も生きようと思った」という呟きを見て、悲しくなった。真っ先にLinkin ParkChesterのことが頭をよぎったから。

でも私は代わりにSIAをそこに当てはめて生きていこうと思う。

ただの後付けにすぎないけれど、Chesterについて書いた文章で頂いたお金で、今回のフジロックのチケットを購入したことにした。

 

宿など何もとっていなかったので、SIA終演後はレッドマーキーに退避。近隣の住民には避難勧告が出ていたらしい。笑うしかない。

もう一つのベストアクト。

ミネストローネ

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夏フェスでこんな暖かいものを欲すると思わなかったわ。シワシワの指でくたくたのお札を震えながら渡して買った。めちゃくちゃ暖かくて、しかもびっくりするほど具沢山で、ハーブも効いていて、身に染みた。とても美味しかった。少し生き返った。

このお店、おいもかふぇ

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毎年出店してるのかな… フェスは1日参戦が限界の私は、フェス飯をチェックしたところできっと悲しくなってしまうだけなので、下調べとかは全くしたことがない。

それから2年前来た時は何度かドリンクを買ったし、人と乾杯もしたけれど、今年は一人だったし、天然のドリンクが嫌でも飲み放題だったので、飲み物は一切買わなかった。

今年の雨はフジロック史上最悪だと色んな方が言っていたけれど、私はまだ2回目だったから、これがフジの洗礼なのかと思って耐えてしまったし、耐えるしか選択肢が無かったし、これを乗り越えたのだからと、これからもまた足を運ぶだろう。

 

Circa Waves (8/15)

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サマソニのエキストラでTDCCと。こんなに最高な組み合わせはまたとないと思った。

でも彼等は2ndを聴いて凄く好きになったから、2ndのツアーをやってくれなかったことがやはり凄く残念だった… あれもこれも聴きたい曲が沢山あった。オープニングアクトでは物足りなさすぎた。

ハイライト: Wake Up / Movies / T-Shirt Weather

 

Two Door Cinema Club (8/15)

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彼らは最高なの。だって最高な曲しか作らないから。彼らの説明はそれだけで十分。

新曲Talkから始まったと思えば、次のUndercover MartynI Can Talkで、いきなり立て続けに私達をノスタルジアへと放り込んだ。

彼らを観るのはこれが2回目だったけど、新曲から過去曲まで、何から何までキラーチューンだらけで本当に驚く。存在が殺人兵器だよ。

彼らに至っては最早、切り札の曲など存在しない。どこまでも容赦なく踊らせてくるから恐ろしい。体力の限界まで踊った。完全なるエンターテイメントの中に身を投じていた。

Alexがマイクを手に決める謎のポーズがいちいち美しかった。

終演後にはSamKevinに会えた。8年ほどファンをやっていて初めてメンバーに会えた。2人ともとても親切で、ああ、この人達があの幸せなサウンドを作ってるんですね…と合点がいった。

ハイライト: Talk / Undercover Martyn / I Can Talk / Next Year / Dirty Air / Lavender 

 

AURORA (11/26,27)

今年はグループ展でファンアートを作る程には彼女に夢中だった。制作の過程に初来日が決まって戦慄した。こんなに物事が綺麗に進んでしまっていいものなのか。正直怖かった。

それでも生きているだけでその日は来た。

来日公演1日目の箱SPACE ODDはキャパが300程度で、それだけでも恐ろしいのに、最前列のど真ん中に立ててしまった。今回のAURORAのライブはフォロワーさんにチケットを取ってもらったのだけど、本当に本当に感謝してもしきれない…… 2人で素晴らしい時間を共有できたことをとても幸せに思う。

 

オープニングアクトに彼女のコーラスを担当するSiljaの歌を聴いた。

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不意打ちの良さで、鳥肌が立った。ノルウェー語、なんだか形容しがたい不思議な言語だな。呪文のようだった。別の世界への扉が開かれた気がした。

 

そしてAURORAが、Churchyardと共に物々しく登場した。

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あ、この、この距離で歌うの…… 踊るの………

彼女がChurchyardでライブを始めると聞いた時は、何故この曲なんだろうと思ったけれど、この曲の持つ謎めいたメロディーは、彼女の世界の入り口にぴったりだった。

衣装も楽しみの一つだったけれど、私が一番好きな色の衣装だった……

 

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瞳が恐ろしいほどに透き通っていた。

 

それから彼女は輝いていた。発光していた。比喩ではなく本当に。

彼女はボディーヘアを一切剃らないことは知られているけれど、金色の産毛の一つ一つが肉眼で見えて、それらが照明の光を浴びてキラキラと輝いて見えた。

 

彼女の髪型はクラゲにインスパイアされていると聞いていたけれど、本当だった。

2日目なんかは遠目に見ていたから、荒れ狂うように踊る中で白い髪が空気を含んでふわっと膨らんだ時、まさに海中で舞うクラゲの様を見た。もちろんそれはカメラで捕らえられるような瞬間ではなかった。

 

今年はあまりにも彼女の曲を聴きすぎていたから、原曲と違うアレンジの一つ一つまで愛おしかった。歌詞に合わせた身振り手振りも好きすぎて、一緒に真似したりした。指の先まで全てがしなやかで美しかった。

 

改めて、色々な姿を持つ人だなと思った。

The RiverForgotten Loveなんかは、可愛らしい少女そのものと言ったように軽やかに踊っていたけれど、WarriorApple Treeでは力強さに圧倒されたし、Animalでは野生を解放させたようにステージを縦横無尽に駆け回っていた。

All Is Soft Insideでは激しく切り替わる照明も手伝って、何かが取り憑いたかのように見えたし、宇宙と交信をしているかのようだった。

Murder SongIt Happened Quietは、それまでの「動」が何もなかったかのような無情な「静」の中で、悲鳴のような歌声を聴いた。

念願の生のQueendomは、まさに女王のように気高かった。

 

でもMCの時になると途端に、彼女は可愛らしい少女の姿に戻った。彼女の口から飛び出る予想以上に綺麗な日本語の数々に、私含めオーディエンスは皆悶絶してましたね。

「日本語を1年間勉強しているけれど、難しいね。まだ食べ物の注文位しか出来なかった」と話していたから、なるほど、彼女の日本語の注文を受けた店員が存在するということ…

 

A Different Kind Of HumanではAURORAの差し出す手の指先が私の差し出す手の指先の数十センチ先にあって、このまま別の世界へと導いてくれるんじゃないかと思った。必死で手を伸ばした。

「私は貴方の為にここへ来た。さあ行こう、元の居場所へ。この世界は貴方にはふさわしくないから。宇宙船に乗って、高く高く」

 

アンコール曲はDaydreamerだった。再びステージに現れた彼女が私達に「自分の夢を追い続けて欲しい」と語って始まったこの曲。Daydreamer、夢想家、今に夢を見る者

彼女の夢の中に私達がいて、私達の夢の中に彼女がいる。この場所で、私達は確かに繋がっている。そう思わせてくれるような曲で、彼女のライブは締めくくられた。

 

《セットリスト》

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彼女自身がステージ側から捉えた素敵な写真をあげてくれた。カメラマンがもっと私達に近づいた写真も。

初来日にしてチケットが即売する人気ぶりからして、もうこの距離では二度と見られないだろうし、逆に次はもっと開放感のある広いステージで、(願わくばダンサー達も連れて)彼女が自由に踊り回る様を見てみたいと思った。そして私も広々とした空間で一緒に自由に踊って歌いたい。

 

なんとなく自分の中に「死ぬまでに観たいアーティスト」のリストがあって、それらのヘッドライナー的存在が、海外ツアーを一切やらないSIAであったし、AURORAも海外に観に行こうかと思っていた。想像していたよりあまりにも早くに全てを観れてしまった。

新たに追加する事だって簡単だけど、それらに縋って生きることが、なんだかあほらしくなった。だって、達成した途端に、無くなった途端に、反対に全てが崩れ落ちてしまうような気がして。AURORAの来日が決まった時からそのことは恐れて考えていた。

来年はマイケミが来日するけれど、彼等はもう一生観れないと思っていたから観るのが怖いくらいだし、The 1975だって観たいけれど、Mattyは私の神様じゃない。

 

口にするのはあまりにも簡単すぎて綺麗事のようだけれど、今度はアーティストの新譜やライブを生き甲斐にするのではなく自分の作る作品を、自分の新作を生き甲斐に出来るようにしたいと思った。

 

いつかのインタビューでAURORAが語っていた彼女の死生観というか、アートというものへの考えが、私の中の物と全く同じもので嬉しかった。

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何故この動画だけ日本語訳があるんだろ… 作成してくれた方へ頭が下がる思い。

 

人の作った物をひたすら追いかけて、人の物で満たされた気になって終わる人生は嫌だ。

来年は自分の作るものに価値を見出すことに専念したい。